「弓と禅」の香り
「弓と禅」 の 一番好きな部分です。 著者 オイゲン・ヘリゲル (ドイツ人、カント派の哲学者)と、弓の師匠 阿波研造 氏の会話。
師 「あなたは的にとらわれてはいけません。これまでのように射るのです。」
ヘリゲル 「しかし、的にあてるためには、狙わねばなりません。」
師 「違います。」 「 あなたは〔的を〕狙ってはなりません。 的のこともあたりのことも、何も考えてはいけません。 弓を引いて射が離れるまで待ちなさい。 その他すべてのことは、それが生じるに任せなさい。」
それから師は弓を執って、引き、離された。矢は的の真ん中にあたった。
そして師は私に尋ねられた。
師 「よくご覧になりましたか。私が、沈思する時の仏陀の絵のように、眼をほとんど閉じていたのを。私が眼をそのように閉じていると、的は次第にぼんやりとなり、やがて的が私の方に来るように思われ、私と一つになります。このことは最も深い集中においてのみ達せられることです。 的と私が一つであることは、仏陀と一つであることを意味します。 そして私が仏陀と一つであれば、矢は存在と非存在の不動の中心 ー したがって的の中心にあるのです。 矢は中心にある ー このことは我々の目覚めた意識からすれば、矢は中心から来て、中心へ行くことを意味します。 あなたは的を狙うのではなく、自己自身を狙うのであれば、あなたは自己自身にあたるのであり、同時に仏陀に、そして的にあたるのです。」
とても深いレベルの会話。 体得した者と、体得しようと真剣に向き合う者、その両方に憧れます。
本質に迫る、その香りが楽しめます。
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